金をかけるか、かけないか


氏の工場では、高価なブースでしか扱えない、高級塗料を使う高い仕事も、
若者から泣きつかれる安いオールペンも、どちらもこなす。

それは彼自身、クルマ好きの若者として、
一銭でも安くクルマを楽しみたい時期を経験しているからだ。

「正直に言えば、鋲金・塗装のような手間仕事は、かかる金額もピンキリなんです。
ただし、いくらかけたか、で、本当の意味での品質もピンキリ」と言う。
もちろん、安い仕事をしたからと言って、仕上がりが雑、などという意味ではない。

オールペン


「たとえばオールペン(全塗装)するとして、30万円でやれと言われれば、できます。
でも一方、一見してさほど変わらなくても、lOO万円かけることもできる。
どこで差がつくか、と言えば、ちゃんとガラスをはずしてやるか、
マスキングで済ますか、また下地作りを一工程で済ましちゃうか、
何工程も重ねるか、という違いなんです」
つまり、パッと見わからないところまで手間をかけるか、
とりあえず外見だけでいいか、の違いなのだ。
逆に言えば、国産車でもそこまでやれば輸入車同様の金がかかるが、
多くの国産車ユーザーは、そこまで求めはしないから安くすむ、ということになる。

高い料金の理由


「ベンツやBMWの正規ディーラーが指定してくる工程は、
たしかにおそろしく手間のかかるものです。
言ってみれば、手抜きを絶対に許さない。
これなら高くても仕方ないんです」
つまり、輸入車=高級車、だから国産車と同じ手間で安く仕上げられちゃ困る。
というお客のプライドが、高い料金の理由なのだ。

リースを利用する


かつては、輸入車造りは国産車より上という印象があったが、
実はそうではない。
プロの話を聞いてみた。

「たしかに、塗料なんかもいいものを使ってるんだけど、
一部のクルマでは工程の差からか、仕上げの雑なところもある。

逆に国産車は製造技術が進んだおかげで、複雑で微妙な色が均一な品質で出ているし、
安いソリッドカラーのクルマでも、キチンとクリアーを吹いてある。
それに塗料そのものが最先端技術で作られているから、
表面の平滑さなどのレベルは輸入車を上回りますね。

ベンツのSクラスなどになると、それなりの手間がかけられているから、
さすがに違うけど」というのだ。

「だから単純に技術的な難しさだけで言えば、輸入車の飯金・塗装代が国産の3倍もする理由はないんです」
と氏も認める料金格差の原因は、どうやらお客の方にあるらしい。

中古車両でも、その細かさは際立つようだ。
クレーン等精巧さが必要となるものはさらに、である。
このような社用車の場合はリースを利用することが一般的だ。

ヤマトリース株式会社
http://www.yamatolease.co.jp/

コストカッター


最初のうちは、コストカッターといわれたゴーンは、
日産の経営改善のために取引先との価格交渉などで
従来の日産では考えられないコスト削減に取り組んだ。

日産の場合は、系列メーカーとの取引が多く、
コスト意識に欠けていても済んでいたものが、
ゴーンの登場によって断固とした改善を迫られた。

それは劇的な効果を上げることができたわけだが、
日本人経営者にはできなかったことであろう。

しかしながら、その程度のコスト削減は、
トヨタが長年にわたって実施し続けていることだった。

原因のひとつ


それが、自動車の分野で成長できない原因のひとつであった。
日産とマツダは、日本人トップによるリーダーシップがとれずに
経営不振を招いたことで共通しているがどちらも果敢なリストラと組織改革は、
ルノーとフォードから派遣された経営者によって主導された。

とくに日産の場合は、大きな社会問題となっていたから、
提携先のルノーから派遣されたカルロス・ゴーンの行動に注目が集まった。

大切にする姿勢


激しい逆風の中で、その道は非常に厳しいと言わざるを得ない。
三菱はトヨタやホンダに見られるような
ユーザーを大切にする姿勢に欠けていた。
明治時代から艦船や航空機の製造など、
軍部や政府と結びついた製品を主力としてきた伝統があり、
個々の顧客を大切にする意識の薄いところが見られた。